レセプトビッグデータによる内分泌代謝疾患の病態解明

2023年6月1日

■ 学会名
第96回日本内分泌学会学術総会

■ 発表日
2023/06/01

■ 筆頭演者
西岡祐一¹,²
1) 奈良県立医科大学公衆衛生学講座 
2) 奈良県立医科大学附属病院 糖尿病・内分泌内科

■ 共同演者
森田えみり¹、竹下沙希¹、池茉美香²、玉城由子²、小泉実幸²、紙谷史夏²、毛利貴子²、中島拓紀²、榑松由佳子²、岡田定規²、久保慎一郎¹、明神大也¹、野田龍也¹、今村知明¹、髙橋裕²
1) 奈良県立医科大学公衆衛生学講座 
2) 奈良県立医科大学附属病院 糖尿病・内分泌内科

■ 発表形態
口頭

■ 要旨
【背景】我々は自ら構築した世界に類を見ない医療・介護・健診連結ビッグデータを用い、内分泌代謝疾患の病態・薬剤関連副作用・予後を明らかにしてきた。本演題ではその代表例として3つのプロジェクトを紹介する。
【方法】日本人800万人を含むDeSCデータベースを用いて(1)特定健診においてBMIが35以上の高度肥満者、(2)抗甲状腺薬が新たに処方開始された患者、(3)免疫チェックポイント阻害薬が処方された患者を対象に解析を実施した。
【結果】(1)高度肥満者のクラスター解析によって、その合併症等の医療情報から7つのクラスターに分類でき、生命予後が異なることを明らかにした。(2)抗甲状腺薬が投与された12,491人の中で投与後71日間の無顆粒球症のリスクが0.7%、G-CSF投与の必要性が0.2%に生じ、その後リスクは約1/10に低下するが少なくとも6年間にわたって持続することを初めて明らかにした。(3)免疫チェックポイント阻害薬処方患者21,185名のうち、103名(0.5%)で免疫チェックポイント阻害薬処方後に1型糖尿病を発症した。興味深いことに1型糖尿病を発症した患者としなかった患者で生命予後を比較したところ、発症者において有意に生存期間が長かった。
【結論】(1)医療機関をほとんど受診せず死亡率の高い高度肥満者のサブグループを見出し、積極的な介入の必要性を見出した。(2)抗甲状腺薬の副作用について長期的なリスクを定量的に明らかにした。(3)免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病の頻度を定量的に示すとともに予後の違いを初めて明らかにした。