レセプトデータ解析による不眠症患者に対するオンライン診療の実態

2023年11月17日

■ 学会名
第28回日本薬剤疫学会学術総会

■ 発表日
2023/11/17

■ 筆頭演者
武島智美
ミリマン

■ 共同演者
岩崎宏介
ミリマン

■ 発表形態
ポスター

■ 要旨
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い、厚生労働省による「オンライン診療の適切な実施に関する指針」がオンライン診療の利用の幅が広がる方向に変更され、2022年4月の診療報酬改定にも指針の変更が反映された。厚生労働省の2022年5月診療分のレセプトデータを用いた報告では、オンライン診療に係る傷病はCOVID-19や呼吸器感染症などが多い一方、不眠症も比較的高い割合を占めることが示された。また、オンライン診療の割合が5割以上の医療機関では不眠症の占める割合が高く、中央社会保険医療協議会では、このような医療機関で薬剤処方が適切であるかどうか調査する必要があるといった意見が示された。そこで本研究では、不眠症患者へのオンライン診療における治療実態を、DeSCヘルスケア株式会社のレセプトデータベース(解析対象期間:2022年4月~8月)を用いて調査した。データベースに含まれる被保険者数は約240~250万人/月であった。解析対象期間にオンライン診療を受けた患者は3,741人であった。オンライン診療に係る傷病名で最も多かったのはCOVID-19で、オンライン診療全体の51.8%(コロナウイルス感染症を合わせると56.0%)、次いで急性上気道炎、アレルギー性鼻炎、急性気管支炎、高血圧症と続き、不眠症は6番目(7.3%)であった。解析対象期間に不眠症の確定診断のあるレセプト数は1,469,562で、うち386がオンライン診療であった。これらのレセプトについて、薬剤処方の状況をオンライン診療者(オンライン診療群)とそれ以外(非オンライン群)で性・年齢調整後に比較したところ、睡眠薬のうち、オンライン群で最も処方が多かったのは非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間作用型)、次いでオレキシン受容体拮抗薬で、これらは非オンライン群より有意に多く、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は超短時間作用型、短時間作用型、中間作用型いずれも有意に少なかった。向精神薬の処方割合はオンライン群が52%で非オンライン群(78%)より有意に少なかった。このことから、オンライン診療では対面診療に比べ、比較的慎重な処方が行われている可能性が示唆された。しかしながら、本研究では診療報酬改定後の5か月間しか調査を行っておらず、その後、状況が変化している可能性があることから、その後の状況についても調査する必要があると考えられる。