スプライン関数を用いた自己対照ケースシリーズデザインによる用量反応関係評価と、Sequence symmetry analysisによる薬剤関連有害事象のスクリーニング
■ 学会名
2024 International Society of Pharmacoepidemiology (ISPE) Annual Meeting, Berlin, Germany
■ 発表日
2024/08/26
■ 筆頭演者
安富元彦¹
1) ハーバード大学公衆衛生大学院
■ 共同演者
岩上将夫¹、宇田 和晃¹、井口 竜太²、田宮菜奈子¹
1) 筑波大学ヘルスサービスリサーチ分野
2) 東京大学
■ 発表形態
口頭
■ 要旨
【背景】大規模ヘルスケアデータベースへSequence symmetry analysis(SSA)適用することで、薬剤関連有害事象のシグナル同定が実施されてきた。しかし、SSAでは多数のシグナルが得られる可能性があり、十分に交絡調整を行った比較研究を実施してすべてのシグナルを調べることは現実的ではない。したがって、用量反応関係を調べるなどしてシグナルを絞り込むことが必要である。
【目的】本研究では、用量反応関係を検討し、偽陽性シグナルを減少させる可能性のあるスプライン関数を用いた自己対照ケースシリーズデザイン(SCCS)とSSAを組み合わせることを提案し、糖尿病治療薬を例として、SSA単独の場合と性能を比較することを目的とした。
【方法】DeSCヘルスケア株式会社が提供する医療費請求データベースを使用した(2014~2021年)。7クラスの糖尿病治療薬の新規使用者を対象とした。曝露は各薬剤の新規開始とし、アウトカムはデータベースに記録されたすべての診断とし、ICD-10コードの最初の3桁で定義した。
まずSSAのみを6ヵ月間隔で実施し、sequence ratioと95%信頼区間を推定した。下限値が1.0を超えるものをシグナルとみなした。次に、SSAに加えて、三次スプラインの線形結合を用いて時間変化する曝露効果をモデリングするSCCSを用いて用量反応関係を評価した。リスク期間にわたって曝露効果が徐々に増加する傾向を示すものをシグナルとみなした。最後に、陽性適中率(PPV)を算出した。PPVは、日本ですでに医薬品添付文書に記載されている転帰のうち各手法で同定されたアウトカムの数を、各手法で同定されたアウトカムの総数で割った値と定義した。
【結果】SSA単独およびSSAにスプラインベースのSCCSを併用した場合のPPVは、それぞれ、α-グルコシダーゼ阻害薬で16.3%(7/43)および27.3%(3/11)、ビグアナイド薬で14.3%(13/91)および6.3%(2/32)、DPP-4阻害薬で14.4%(22/153)および4.3%(1/23)、GLP-1受容体作動薬で24.1%(7/29)および30.0%(3/10)、SGLT-2阻害薬で19.8%(24/121)および16. 0%(8/50)、スルホニル尿素薬では13.7%(7/51)および6.3%(1/16)、チアゾリジン系薬剤では23.1%(9/39)および20.0%(3/15)であり、7クラスすべてにおいてスプラインベースのSCCSとSSAを組み合わせることでシグナル数が減少した。一方、PPVが増加したのは2クラス(α-グルコシダーゼ阻害薬およびGLP-1受容体作動薬)のみであった。
【結論】SSA単独と比較して、スプラインベースSCCSを用いたSSAはシグナル数を減少させた。しかし、PPVは向上しなかったことから、この方法では重要なシグナルが見逃される可能性があることが示唆された。性能を向上させるために、今後の研究でスプラインベースSCCSの様々な設定を検討する必要がある。
