レセプトデータを活用した家族関係の推定手法とその妥当性評価
■ 学会名
第84回日本公衆衛生学会総会
■ 発表日
2025/10/29
■ 筆頭演者
森田えみり¹
1) 奈良県立医科大学 公衆衛生学講座
■ 共同演者
西岡祐一¹,²、竹下沙希¹、山﨑一幸¹、明神大也¹,³、野田龍也¹,⁴、今村知明¹
1) 奈良県立医科大学 公衆衛生学講座
2) 奈良県立医科大学附属病院 糖尿病・内分泌内科
3) 浜松医科大学 健康社会医学講座
4) 関西医科大学 医学部 メディカルデータサイエンス講座
■ 発表形態
口頭
■ 要旨
【目的】保険者が被保険者の基本属性として収集している台帳情報を用いて個人間の家族関係を判定する手法を開発し、その妥当性を評価する。
【方法】DeSCデータベースを使用し、親子ID(養子を除く親と子に設定)および続柄コード(世帯主からみた家族関係)の両情報が提供されている者を対象とした。親子ID、生年月、性別の情報を用いて、父・母・息子・娘・兄弟・姉妹・夫・妻を判定し、続柄コードを参照基準(reference standard)として一致度を評価した。それぞれの家族関係について感度、特異度、陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)、κ係数を算出し、本手法の正確性を評価した。
【結果】対象者は1,958,724人であった。感度は父が最も高く99%、夫・妻98%、娘93%、息子92%、母88%、姉妹86%、兄弟85%であった。特異度およびNPVは、有効数字の範囲内で全て100%を示し、誤判定は少なかった。PPVは母・息子100%、父・娘99%、兄弟98%、夫・妻97%、姉妹96%であった。κ係数は父0.99、夫・妻0.97、息子0.96、娘0.95、母0.93、兄弟0.91、姉妹0.90であり、いずれも高い一致度が確認された。
【考察】台帳情報を用いた家族関係判定手法の妥当性が明らかとなった。本手法の確立により、続柄情報が取得できない場合でも扶養制度に基づく家族構成の推定が可能となり、これまで困難であった家族歴の大規模な解析が実現することが期待される。
